毎日も手作りだよね

今なら部屋の窓を開け放って六月の湿った空気肺一杯に吸い込んで、ひとつの淀みもなくあたし幸せって言える気がするの。大嫌いなお母さんにも優しくできる気がするんだ。

たった数メートル、たった数十歩、恋人の部屋から駐車場までのたった数分の距離、手を繋いで歩く私の幸せ。
恋人のベッドにふたり根を張って汗と精液と体温にまみれながらお笑いdvdとバラエティ番組と映画を見ていたら夜が来て夜が明けてそしたらまた夜が来て、逆転した生活、深夜のコンビニにパジャマのまま出掛けてしまってスイーツを買おうね、手を繋いで、これが私の幸せ。
ラーメンズ東京03も言葉遊びが本当に天才的だよね、としか表現できないくらいの語彙力で頑張って感想言ってみる。テレビの中もこの部屋の外も誰かの思惑や悪意で出来てるって好きなバンドは言ってたけど、私たちの毎日は手作りだよね。誰も踏み込めない分厚いルールでふたりを囲うの!日の当たるところはおいちゃんにわけてあげるからお願い。日の当たるところでも寒くなるきっと。猫の額ほどの土地でその希望に焼かれて死んでもいいからお願い。

土曜日においちゃんの家でメンバーさんと宅飲みしたら、私懲りずに絡み酒してしまうし、そしたらおいちゃんは私の横に座って「俺もう気にしてないよ?だいぶ吹っ切れた、だから元気だして?」といきなり大公開傷口に塩だし、メンバーさんはすでに事情を知っていてかつおいちゃんから相談を受けていたという事実が判明するし、私のクソビッチと過去の過ちをこの場で舞台にあげて笑いにかえて幕を閉じてしまおう感がすごくて「やだやだやだーー!殺してくれーー!一思いにトドメを刺してくれー!さもなくば今この場で死ぬ!」と不穏な言葉を叫んでいたらおいちゃんが後ろから抱き締めてそしてほっぺにちゅーしてくれて慰めてくれた。みんなの前で。....他人の目のある中で。
冷やかしムードの一切ない和やかな雰囲気の中で私の片想いがやっと成就した。誰の目にも間違いなく映ったでしょう?私今幸せ、私この人が好き、これが私の好きになった人よ。って世界中に言い触らして歩きたい気分だった。どこに降り立っても過不足なく愛を説けるような真剣さで。

「君がいつまでも後ろめたさを感じて、俺は俺で沈んだままで一緒にいて楽しい?楽しくないでしょ、だったらどうにかするしかないんだよ」ってそう教えてくれた人は今まで一人もいなかったよ。どうにかするしかなかったけれど私ではどうにもできなかったから死のうと思ったんだあのとき、おいちゃんがそう言ってくれるならどんなに狂ってもちゃんとやれる気がするよ。

必死に抵抗したけど見られた左腕、赤いみみず腫の傷痕「馬鹿なまねするなって言っただろ、へんな気起こすなって、あのときどういう気持ちで俺が言ったのか君わかってるのかよ」って1時間おきの確認作業、「痛そうに見えるけどそんなに痛くない、というよりおいちゃんの痛みに比べれば」と笑う私の頬をつねって叱る32歳...サイコーかよ...私理不尽に怒鳴られる経験は数えきれないほどあるけど、きちんとした理論の元できちんと叱られたことそんなにないから普通にときめいちゃうんだよねごめんね...叱られるために自傷してるわけじゃないけど。自傷とか、他人から見れば痛くて悲しくて理解できないようなことを、繰り返す理由を理解してもらいたいと思わない。時間の無駄だと思う。私は見せつけるためにしているんじゃないもの。あなたが悲しくてどうしようもないときにカラオケで叫ぶのとどう違うの?ってんなわけねーだろ、自分がおかしいと自覚しろ。自分が一番可愛いことくらい認めろ。うかうかしていたら手段が目的になるからね。動脈切る前に、自分がおかしいって自惚れじゃない心のちゃんとしたところで気づきましょうね。

慣れてくるともはや自傷は作業と一緒だから本人からすると、少なくとも私は、痛くも痒くもない。けれど、自分を思ってくれる人がそんな不健康なやり方でしか自分を維持してられないっていうならそれがこの世で一番の不条理だと思うし、あなたの痛みはあなたの痛みでしかないって教えてあげたい。
こんなに頭と体、わたしとわたしが簡単にバラバラになるような時代だもの、痛みで繋ぎ止めるのは正常な感覚と言えないでもないけれどそれも虚しくなるだけよ。
私はこうして文章を書くことでどうにか繋ぎ止めているけれどそれがどれほど力を持っているのかはわからない。だからせめて好きな人くらいには私っていう人格や肉体を刻み付けたい、背負ってほしい。私も背負うから。あなたが信じる私を信じるから。


貴方の好みならなんでも分かっているのよの配色の下着。少し高めの黄金色のはちみつ。新しい石鹸の袋を破いたときのほのかな香り。もう昔の気持ちは忘れちゃったなあ。死について考えない自分に焦燥を感じて慌てておいちゃんの死体を見る。
星はただ綺麗としか言えなくなった。

本当は言いたいことなんてあんまりないんだよね。
もしくはきっとずっと同じことが言いたいんだと思う。

あの部屋のエアコンディションは最高で、テレビとパソコンの明かりだけがチカチカ眩しくて、おいちゃんの真っ黒の目が私を見つめるときいつも言葉が出ないのは、話しているそばから私の大切な気持ちが消えてしまう気がするからです。言葉に出来ないものは言葉にしてはいけない。瞳の奥の沈黙の中のほんとうの気持ちを知りたくて重たい沈黙に耳をそばだてる。涙がでそうな幸せのときと悲しくて仕方がないときの胸の痛みはなぜこれほどまでに似ているのかしら。

おいちゃんの足を舐めた。服従されたかったのにあんな顔ずるい。

恋の話ばっかりしてると馬鹿っぽいから趣味がほしい...。
趣味がおいちゃんなんだよね...。

代わりに僕が罰してあげましょ なんて言うかよバカ

いっそ今まで使ったこともないような汚い言葉で罵ってくれたら、なんの躊躇もなく前方の車に突っ込んで清々しいほど豪快に醜く肉片を撒き散らすことができたのに、こんな風になっても抱き締めてくれてキスをくれて「大丈夫?帰れる?へんな気起こすなよ」なんて言ってくれるんだから、私いよいよ死んでしまいたい。

彼が傷つくなんて思ってなかった。
恋人になったって、大好きなのはいつも私だけだと思っていた。土曜日に飲めないくせに甘ったるい酒を鼻をつまみながらガブガブ飲んでゲラゲラ笑ったり怒ったり先輩に絡み倒して手当たり次第色んな人に電話して脳味噌ちょうサイケとか思ってたらおいちゃんがむかえにきてくれて、顔見た瞬間「私のこと好きじゃないくせに優しくすんなよ!」とか32歳にめちゃくちゃため口きいてギャン泣きしながら暴れたら、「なんでこんなに酔ってるのよ笑」なんて言いながら抱き締めてくれて、私の支離滅裂な話を聞いてくれて、「君が2年後まだ俺のこと好きなら同棲しよっか」って言ってくれた、あの時の声のトーンもいつも鼓膜にこびりつくその呂律も後ろ髪をくすぐる鼻先も抱き締める腕も怖いくらい覚えてるのに、それで私舞い上がってしまってふたりの未来について、未来の生活について、夢物語なんかじゃないそう遠くもない未来の希望についてなんの疑いもなく語り合っていたのに。
私あんなに優しい人を傷つけた。

過去の恋愛について全部教えてくれないかと言われ、まあ私がクソビッチなのは付き合う以前から周囲にはバレていたし、私には気にするまでもない過去のちょっとした過ちという認識しかないから笑い話のように話していたのだけれど、不倫さんのことだけは現在進行形の間違いとして、「でも会ってないしちょっとしたメル友ですよ」くらいの気持ちで暴露したつもりが、「会うとか会わないとかそういう問題じゃないんだよね」というおいちゃんの一言を皮切りに、「あっあっあっ」って脳味噌チカチカしてる間に、どうしようもないところまでいってしまった。

不倫さんのことは究極まで濁したし、そもそも会っていないなんて嘘だし、だから心底自分は卑怯だなって思いもしたけど、そこまで話す必要もないと思っていたから。だって私が好きなのはおいちゃんだけだもの。

でもそれが甘かったんだね。
おいちゃんが傷つくなんて思ってなかったんだよ。
だって私のことで彼が傷つくなんてどうして思えたの。誰か教えてよ。

「俺に告白した時点で言ってくれれば傷はつかなかったよ。俺と付き合ってから君が浮気するのだってそれは俺の責任だから許せる。」

以降何の言葉も発しなくなったおいちゃんが知らない人みたいで怖かった。

わかったよ、これなんだね。
なにか辛いことがあったときダウナー系だから沈むしかないよって笑ってた意味を、死んでやろうって餓死を選んだ理由も、あのとき全部合致した。
なにか言いたげに金魚みたいに唇を微かに動かすけれどそれが音にならなくて、奥二重のおっきな目をうつろに細めて、ひたすらじっとベッドに背中を張り付けて、耳に痛い沈黙をまもって、死体にでもなろうとしてたの?
私人形みたいになったおいちゃんの上でボロボロ泣きながら「ごめんなさい、許して、何でもするから何でも言うこと聞くから、何か言ってよねえ、今何を思っているのか教えて」ってそればっかり三時間馬鹿な女みたいにすがりついておいちゃんはビー玉みたいな目で私を見つめ続けてあの地獄のような長い長い静寂、怖かった。

清算してくれ...ってうなり声みたいに発声したから私おいちゃんの目の前で不倫さんのメアド消去して、一方的さよなら告げたの。
でもそうしたところで、おいちゃんの中で"自分と付き合っていながら他の男とメールしていた"っていう事実が消えるわけでもないから、私が何を言ったところで言い訳にしかならない。

私がおいちゃんにしてきたこと全部、言ったこと全部嘘じゃないよ。全部本心なんです。大好きなんです。って訴えても、こういうとき言葉は本当に無力だね。

今の私が何を言っても私の言葉はおいちゃんを傷つける道具にしかならない、それが本当に辛い。
傷つけばいいと思ってた、あんたのその痛みが私を証明する唯一よ、あんたのそのドーナツの穴みたいな虚しさが私があんたと生きてる唯一の証拠なのよってやり方で生きてきた。
間違ってたかなあ。おいちゃんを傷つけて、傷ついてるおいちゃんを今目の当たりにしていて、あれから数日泣き続けて、家でも学校でも水分なくなって干からびるんじゃないかってくらい泣き続けて、数年ぶりに腕を切って、切ったところでこれはおいちゃんの痛みじゃないのよ。苦しくて吐き出したいでも吐き出せない泥水のような罪悪感をそれでも吐き出すためのものとしての自傷行為。もう切るスペースないから傷を重ねて、ぷつぷつはしっこにたまる赤い水玉、あの頃みたいにはいきませんね、勢いが足りない、まあ血をみたいわけじゃないからね、痛くなれば満足だけど本当に痛いのはあれから毎日やむことなく痛む心臓や胃などの臓器で、もっと言えば痛いのはおいちゃんで、何を被害しゃぶって「痛みがわかるよ」だなんて、馬鹿みたい。
私馬鹿みたい、おいちゃんからしたら私がおいちゃんにあげた大好きって言葉も愛撫も愛液も嫉妬も馬鹿みたいでしょう。嘘つき。
まあ悲しいよね、信用されないのは。仕方ないよね、自業自得。


「ポジティブに捉えるならこれだけ傷つくくらいには君のこと好きだってことだよ」って言われて、「ああやっと...!私の夢叶った!」って手放しで喜ぶことができないくらいにはまともな頭。
ごめんなさいでもちょっぴり嬉しいですおいちゃんのほんの少しにでも爪痕残せたのならそれが私の全てです。

あー

優しいから、すぐには立ち直れないしお出掛けもする気力ないけど会いたかったら会いに来てと言ってくれるから私はこんなぐちゃぐちゃになりながらも毎日会いにいって、毎日おいちゃんと抱きあいながら数時間泣き続けて「そろそろ泣き止んでよ」って言わせちゃう被害者はあなたなのよってまた泣く。

少なくとも1ヶ月は人間らしい生活をできる気は全くしませんね。おいちゃん私が死ぬんじゃないかって本気で思ってるから、自分の心配しろって感じだけどあの人、まあ死なないように頑張ります。
私の言葉嘘じゃないってどれだけ時間かかっても信用されるように。今まで赦しを乞うふりをしてどうでもいい顔してた罪とか間違い全部まわってきたのね、つけが。でもこれでやっと不倫さんとも関係終わらせることができたし私やっとアバズレ卒業できる。
おいちゃんのために生きていくのよ。

君が先に生まれたことをついさっきまで忘れていた

恋とか愛とかおいちゃんとかそればっかり毎日毎日飽きもせずにつぶやいてまるで恋愛パラノイアそんな私は誰の目にも滑稽に映るだろうか、熱病に浮かれて酩酊する頭すっからかんの若者のひとり、でも私はどうしようもない下戸なのです。


お酒入ってるチョコレートとかオレンジピールがアクセントのチョコレートケーキとか意味わかんない。兎の皮かぶった狼かと思うよあんなに暴力的な糖分があっていいわけない。甘いはそれだけで暴力じゃないといけない。砂糖付けの海とかアメリカのちーぷなショッキングピンク着色料ドバドバのバターケーキとか私がいつも抱えている大好きな人への「ねえ血混ぜていい?!体液とか入れていい?!いいよね!一生に一度しかない死因あなたの胃液に溶かされてミートパイになりたいの!」とか。

そんな原色抱えて生きているのに、ゆっくり溶かされていくみたいな会話。
これが幸せかと勘違いしてしまう私の容易い脳が吐き出す言葉が淡いピンクや透けるようなオレンジ、水色や黄緑したゼラチン気質の膜に覆われて、おいちゃんの部屋をぷかぷか漂っている。おいちゃんが息を吐く度にぱちぱちと弾けておいちゃんが一層きらきらと輝く様は。少女漫画にでもなれるんじゃないかしらこの人。

「餓死しかけていた頃のおいちゃんに会いたい」「ただじっとしてるだけだからつまんないよ」「いいんですじわじわ衰弱していくおいちゃんが見たい」「君そんな顔してどえすなの?」「ちゃかさないでください!」
「そういえばモンブラン買ってきてたんでした」「モンブラン好きとは言ったけど君、もう23時だよいけない子だねえ、おっさんにはキツいなあ」「じゃあかわりにちんこ見せてください」「かわり」「ちんこにモンブランこすりつけたい」「ねえ」「おしっこしてるとこ見せて...」「よくない」「....食えねえな」「あれ?本性出た?」
みたいな
ちぐはぐな、ふわふわの会話を繰り返しては時々眠ってまた起きてdvdを見て、起き抜け 鳥の巣みたいな頭した私の髪を撫でてくれる。
こんな普通の幸せを幸せとして認識できる私はもう大丈夫。
不倫さんが心療内科に行ったって、眠れないんだって、私に依存されたいって顔を歪ませても私はもう引きずられないし同情もしないしメンヘラじゃないし人との距離の取り方がわかる。
綺麗事は言わないけど、同情なんかされたくねえって本物の強がりさんじゃない限りかわいそうって言ってほしいのが人間だとするなら、一晩中あなたかわいそうねって慰めてあげる。
ラブホテルでセックスもしないで一晩中傍にいてあげられる。私が好きなのはおいちゃん一人だけだけど、私の良心を注いであげられる人は沢山いる。
案外それで救われたりするものよ。

お前こそ向精神薬眠剤飲みすぎてドラム叩く手震えてるのに偉そうに説教できるわけ?手首の傷隠したら?そんなためらい傷で私に近づけると思った?救えるとでも思った?思い上がりもほどほどにしろよ、愛は全能でも万能でもねーぞ
ってトイレで喧嘩してトイレの壁に血しぶきぶちまけたあの頃の私が生温い風にさらわれる。
夏もすぐそこ。

あの子の寝顔観察

幸せな奴のブログとか幸せになった奴のブログなんて読んでいて面白くない。そんなディズニーランドみたいな世界じゃなくて、私は不幸ごっこに酔いしれるオナニーブログが読みたい。
でも私はまんまと幸せになってしまったので、正しくマスターベーションを垂れ流します。

大勢の中の一人だった私がおいちゃんの隣を独り占めして笑ったりしている...好きなものを汚したくないから見ているだけでそれで充分だからって熱視線で焼いた筋張った腕や肩に触れている。男のくせにやたらと血色のいい唇や頬に近づいて首を噛んで粘膜を擦りあって指をからめあって菌を交換している。奇跡だ、彼が生きる全てが奇跡で毎日がとても穏やかに流れていく。
あんなにセックスばっかりしてきたのにほんとうに好きな人のひとつひとつがこれほどまでに緊張するなんてまるで中学生みたい。丁寧に丁寧にお互いを探っている。
私は破滅型だから。ずっと一緒に死んでくれる人を探していた。私を忘れてほしくなかった。永遠になるためには死ぬしかないと思っていた。お願いだからわたしだけを見てよって腕を切りつけて血を流したところで縛り付けることのできるものなんて何もないって気づいていたけど、同情的な男たちがたくさん慰めてくれたから便利だった。

中二病なんだろうけどやっぱり壊すのが好きだ。
そいつが今まで築きあげてきた信念や常識をぶっ壊して私で再生させることに夢中だ。私がいないと生きていけない人間を見下しながら傍に置いてほしがった。私は頭が悪いし世の中のことは何もわからないし歴史も苦手なので、時代どうこうと語れないのがとても残念だ。子供の頃から真面目に勉強したり本を読んでおけばよかったなあ。それでも私が生まれたときから愛はコンビニで買えたし、巷に溢れかえるラブソングがワゴンセール同等の価値でこの私とやらを侵食していたのは言うまでもなかった。愛の重さは暴力に他ならなかった。それは物理的なものでもあったし精神的なものでもあったけれど、血が流れなければ全てはお遊びのように退屈で温いものだと盲目的に嫌悪していた。痣ができるとほっとした。精液が太股を伝う感覚にうっとりしていた。私こそが正義だ、不健全なのはこんな世界で愛だ恋だをへらへらと語りながら週末はディズニーランドに行きたいねなんて笑っているお前らの方だ。

こんな過去が今の私を形成しているのは悔しいけれど事実です。


過去の過ちも、私がどういう人間なのかも洗いざらい話した。おいちゃんは座布団を枕にして寝転びながら、お伽噺を聞いているかのようなやわらかさと少しの好奇心で私の話を聞いていた。
「私は後ろ指をさされるのは慣れていますがおいちゃんに迷惑かけたくないんです、引いたでしょう?」と言ったら「でも今は違うんでしょう、なら問題ないよね」と。そう言って私のケロイドでぼこぼこの左腕を撫でた。そうだ私はこの人のそういうところが好きだった。下手に俺が守ってあげるからなんてことも言わないし、突き放すこともしない、そういう軽く笑い飛ばしてしまう明るさが好きだった。私もおいちゃんもダウナー系だからふたりでズルズル落ちてしまうんじゃないかって私たちの共通認識として心配していたけれど、なんだか何が起きても乗り越えられる気がしてしまいました。
してほしいことしてほしくないことしたいことしたくないこと全部話しましょうって言ったくせに二人とも唸るだけで見つからず、私はおいちゃんがしたいことをしてほしいし私はそれを叶えてあげたいからこうしているので。なにか案を捻り出したと思ったら「してほしいことなら、肺炎だとかの可能性あるからはやく病院に行きなさい。」と注意されて萌え殺された。私は数年前から風邪をひくと数ヵ月咳だけがとまらなくなってしまった。相変わらず不正出血は続いている。

思い返せば、たった1ヶ月の間に行ったお花畑も大洗の水族館も小さい動物園も変な美術館もずっと笑っていた記憶しかない。可愛くみられたいから綺麗に笑いたいのにおいちゃんも私も楽しい人間だから大口あけてゲラゲラ笑い転げてしまう。私たちは絶対絶対おもしろい人間だからどんな場所でもエンターテイナーみたいに過ごしていられる。


お出掛けもすごくすごく幸せだけれど、昨日のお泊まりが一番幸せだった。一緒にアイスを食べるだけで涙がでるほど嬉しかった。あーーもっと、映画やドラマに興味を持っておくんだったなあ....おいちゃんの頭の回転のはやさや言い回しのうまさは、生まれつきも絶対あるのだろうけど、きっとこれらがおいちゃんを形成しているのねと思ったら嬉しくて楽しくて私ももっと海外ドラマとか映画見てみようという気になった。好きな人が好きなものを好きになりたい。興味のあるものだけね。抱き締められながら見たフルハウス素敵だった。
ずっとずっと抱きしめあいながら眠った。私は寝るのが勿体なくておいちゃんの寝顔を観察して過ごした。時々おいちゃんは目を覚まして、目を覚ますたびにキスしてくれた。
誰かと抱きしめあって寝るとき、説明のつかない寂しさが常にあった。オレンジに溶ける部屋でダウナー音楽に沈みながら最高の孤独に混ざりあうこともできない、大勢のなかでひとりぼっちの一番苦しいやつに近いそれ。横になって泣くと生暖かい涙が小鼻をつたって首まで流れるのが気持ち悪くて嫌いだった。背中合わせの誰かが寝返りをうつたびに、私は大切なものをひとつひとつなくしてしまう。

おいちゃんと眠ったとき、1度も寂しいと思わなかった自分がすごく自然に生きているみたいで安心した。安寧はここにあったよ。これから何度も悲しくなるのだろうけど、それはもう変わらないのだろうけど、できるだけ長く生きたいなあと思う。

おいちゃんが仕事に出掛けるまでの1時間、後ろからくるまれながらフレンズを見た。私朝が苦手で、おいちゃんの寝巻きを顔に巻き付けて(匂いを嗅ぎたい)ベッドの上で体育座りしながらぼけーっとしてたら「そこのねぼすけ服を返しなさい」と言われてやっぱり萌え殺された。ねぼすけって....!ねぼすけって...!こんなに可愛い響きしてたっけ!?ああそうかおいちゃんが可愛いんだ!!ぎゃー!!とかしてた。

昨日一晩で、私の噛みぐせがばれたり好きな人の服を持って帰ろうとしたり眼球舐めてみようとしたりだいぶいろいろ露呈したけどぜんぶぜんぶ真剣に笑ったり実践してみようとするおいちゃんが愛しい。

魔法は効かない 呪いは解けない

うわー!死にてー!全て自分で仕組んだことなのに誰かに責任をとってもらいたがっている。


彼氏と別れた。
正確に言うと、1度距離を置いてその期間中にお互いのことをきちんと考えるという冷却期間を置くということだ。
さらに正確に言うと、私が彼氏と今後付き合っていけるかどうかを私ひとりが考えて最終的に結論を出すための猶予期間である。

初期衝動でずっと生きていけないのなら私たちきっと友達でいるほうがうまくやれる。
本当は、DVとか私が彼氏に言った酷いこととか、そういうのは別にどうでもよくて、私がもう同情心だけで彼氏と一緒にいることに耐えられなくなった。この提案を持ち出したとき、それはもうお互いダムが決壊したようにワンワン泣いた。私はこれから彼氏が いなくなるという寂しさというより、とんでもない決断をついに自分自身がしてしまったという後戻りの出来ない不安や恐ろしさによってワーワー泣いた。今まで散々別れたほうがいいとまわりに言われながらも、そして何度も浮気しながらも結局別れることなくここまできてしまったのはひとえに私に決断力がなかったせいだ。今までの、人生に対する決断力のなさが恋愛まで持ち越されてしまった。考えているようで何も考えていないよね君はと、見抜ける人なら見抜けてしまう私の臆病。

最後は泣きながらキレてキレすぎて冷静になった。そんな私の隣で彼氏はほぼ過呼吸ぎみであれこいつ死ぬのかな?私がいないとやっぱり死ぬのかな?と、やっと彼氏にぶつけることができた愛や恋だの綺麗な言葉では誤魔化せない同情心がむくむくと膨らんできて「あっうんまあでも別に別れるって決まった訳じゃないしそんなに落ち込まないでよ人がこんなにも悩んで決断したんだからあなたが泣くのはずるいよとりあえず私の誕生日までは恋人でいるしあなたの誕生日までには結論だすし...何も絶交するわけじゃないんだからメールだってLINEだってしていいよ?ただ夜会えなくなるだけで、、あなたの誕生日って10日後ぐらいなんだから私が自分探しのプチ旅行にでると思ってさあ10日だけ我慢してよ。」っておい!予防線はりすぎ!!別れる気ないだろ!!

泣きじゃくられながら「ずっと待ってるから、俺が好きな気持ちは一生変わらないから」と言われた。



別れ話の前に彼氏と夜桜を見たのだ。
淡い雪のような花びらがライトアップされて鮮やかなピンクに染まっていて幻想の世界のようにきれいだった。屋台の食べ物は全部はんぶんこした。わたし春に生まれて幸せよ!!って笑っていたのに私はおいちゃんや不倫の彼のことを考えた。ふと隣に誰がいたらいいだろうと考えて誰もいなくなった。私の隣にいるのはいつも寂しさや悲しさだ。

昔のように死ぬことについては不思議と考えなかった。桜を見ては泣いていた。花が咲けば泣き、花が散れば泣いた。私は全うに思春期の感傷に振り回されていた。思考はどんどんシンプルになっていく、どんどん色んなことを忘れていく。好きな人たちを好きな気持ちもいつか忘れていくだろうか。

そろそろ疲れた。

だから私は彼氏と1度離れて、おいちゃんに告白をして全部終わらせなきゃいけないんだ。
私に呪いをかけたのは世間でも彼氏でも好きな人達でも過去の思い出でもなく、私だったんだね。

だから私は彼氏ともう1度付き合う前に、おいちゃんに告白をする。本当はおいちゃんの5月の誕生日に告白するつもりだったからこれは誤算だが。

なんで水曜日学校あるんですか...行かなくていいかな学校....健康診断とか....今さら悪いところだらけだし....おかしいところたくさん、とくに頭がね....絶対夜眠れないし朝から動悸で死ぬと思うんだよね。告白したことないし!告白するときってどんな服着ればいいの?!

約束メールを保存して嬉しくて切なくて少しだけ泣いた。



彼氏にまつわる相談というのは二人きりで会うための口実。そして本当に私が終わることへのカウントダウンで彼氏のことをもう1度好きになる希望です。希望と言い張らなければ。
だってもう仕方ないよ、待ってるって言われたら私のような人間を待ってくれるのはこいつだけしかいないって思うじゃない。だってもうわかんないんだよ、どうやったら彼氏が私を嫌いになるのか。散々奈落の底に突き落としてきたのに。


私って案外普通の人間だから、悲しい別れが嫌いなんだ。
全部なくす気なんてさらさらない。

「で、いつ同棲するの?結婚は?」と聞かれるたびに私は嫌な人間にならなきゃならない。「そもそも好きかどうかわかんないんですよね」と言えばわかりやすく驚かれるか苦笑いをされる。ただ、経済的な問題がうんぬん、喧嘩が多くてうんぬん、彼氏の嫌いなところをいい並べても、私の発言にはそれに至るまでの2年間が詰まっていなきゃいけないし本当は全部説明しきらなきゃいけない。殴られたときの頬の痛みとか胃液の味とか頭が痛くなるような喧嘩の日々とか浮気とか、それでも幸せを感じた日々とか同情とかあいつは私がいないと簡単にくたばっちまうんだよなという呪いも、全部伝えなければ不毛な言葉だけが表面をかすめて空白だけが残る。それがとっても嫌なのに、でもじゃあ全てを説明するのにどのくらい時間がかかる?そんな気力はないし、たとえ出来たとして「じゃあ別れればいいじゃん」「付き合うって大変だよね~」などという当然の答えしか返ってこないのはわかりきっていて、それに対して意見するのもまた面倒だ。私はつまらない人間なんだ。つまらない人間だから、こんな風に浮気ばかりするくせに一向に彼を離してあげることができない。

かわいそうな彼氏。待ち合わせに5分遅刻するくらいでお菓子の詰め合わせを私に差し出して「ごめんなさい嫌いにならないでずっと一緒にいて好きだよう」とか泣き出すかわいそうな彼氏。

「今日の夜会えないかな?好きだよ付き合おうよ」とかわいい絵文字つきで送ってくるそこそこのイケメン32歳、奥さんがいるらしいので私はつまり不倫に加担しているわけで、めんどくせえなと最近思う。破滅型のくせに変なところで慎重なので何があっても狂えないのですよ。セックスはうまいのに勿体ない....重い重い!想像力がない。
結婚、出産に罪の意識や、不安、そういうネガティブな要素ばかりを感じてしまうのは誰もが経験したであろうありきたりな過去のトラウマのせいだろうか。自殺したりメンヘラになってみたり、小学生から高校を卒業するまでの数年間で毎日毎日人が死ぬということについて考えて考えすぎて畳の上にゲロを垂れ流すくらい真剣に絶望していたりそういうそもそもの気質が原因だろうか。いずれにせよ、私の遺伝子など私で途絶えてしまえばいいのに。自分の遺伝子を宿した子供が産まれるという、一番私が見たくないものを祝福される地獄。
私はきっと自分の子供を私の人生の人質にとってしまう。

私がこんなに悲しくて人生がうまくいかないことの犯人にしてしまう。おばあちゃん。私が死んでいつかきちんと謝ることができたら私を地獄に突き落としてください。
あなたの遺伝子を持った子供の腹から出てくることができて本当によかった!それは奇跡でしかないです、歴史は神秘です、同時に呪いでもあります。
私は彼氏との恋愛やおいちゃんに対する恋心や家族とのゴタゴタや学校生活や自分のポンコツ具合に悩んでいるわけじゃないのかもしれないね。結局人は同じことをずっと考えているのかもしれない。年をとって形がかわっても根本は、本質は何一つ変わらないのかもしれないよ。

というわけで私に下手な面倒を持ち込まないでほしい。現実的に考えてくれよ、21のクソ女と歴史を軽く天秤にかけないでくれよ。


長期休み期間、私はものすごくアグレッシブに動き回っている。横浜鎌倉旅行はめちゃくちゃ贅沢に楽しんだし、友達とライブにだって行ったし、秩父にも行ったし、メンバーさんとは週一でホームパーティーみたいなものをしているし、美術館だってたくさん行った。
綺麗ものをたくさん見た。

残酷で汚くて儚いものを綺麗だと言って泣くのはもうやめよう?思考はもっとシンプルでいいはずだ、複雑なものは突き詰めるとシンプルなのだ。
と言い聞かせてなお儚いあなたが綺麗だと思う。

就活は乗り遅れたというよりこのままフェードアウトする気しかしない。この世にはどうしても働くことに向いていない人間がいるのだ!!


もうすぐしたら私誕生日をむかえる、死なないぞ。
私は彼氏のこともおいちゃんのことも友達も先輩も大嫌いな家族もみんなのことが大好き大好き大好きーー!死にたくない!!好きな人たちが一人残らず死ぬまでわたし絶対死にたくない!!
嫌いな人なんて数えるほどしかいない。死ぬまで会いたくない。無理だろうなぁ...。

面白いこと本当のこと愛してるひと普通のこと

病んでる時は過食症患者のブログをひたすら読み込むのが好き。
克服した病を遠くの方から眺めるのが好きなのだ。
「まるで動物園のパンダみたい」って思う。
精神的な歪みというのはそれほど遠い存在でもないのは心理学専攻に所属していれば簡単にわかることなのだけれど、精神的に何か問題を抱えている人間はやっぱり周りから奇異な目で見られていると感じる。リストカットってなんでするんですかね、痛いでしょう、という問いかけににアハハとしか返せなかったとき、おそらく同業者には私の空笑いなど一瞬で見抜かれてしまうのだろう。そんなに特別なことじゃないんだけどなあ...と悲しく思うとき、でもそう言ってしまうと、えっなんかあったんですかとか無駄な詮索が始まる気がして私は曖昧な返答しかできなくなるのだ。だけど私はパンダじゃなくて人間だし、ましてや守られたい人間じゃない。
私は守られたい人間じゃない、他の、同情を引きたくて注目を集めたくて弱い自分に陶酔してるかわいそうな私そんな私が誰よりも好きな守られたいメンヘラじゃない。断じて。腕はズタズタだし今日だって頭が痛すぎてここ何日か泣いてばかりで右目だけ腫れ上がってとても人に会える状態じゃないけれど、自分で乗り越えるしかない。本当に死にたい人間は誰がなんと言おうと死んでしまう。寂しいけれど。本当に救われる気のない人間はどんなに慈悲を与えようとも裏切るようにまた沈んでいく。だから私は誰にも救われないよ、ごめんね。

「流れるような説明がとてもわかりやすいし、言っていることは全て全うだから、ぐさっとくるよね。」
おいちゃんが、おいちゃんがそう言ったのよ!!!
それらは9割が彼氏に対する説教で、そういったとき「強いなあ」と笑ってくれるのが嬉しくて嬉しくてヒートアップしてしまう自分の単純さを呪う。
"こんなに酷いことを毎回言ってるんだから彼氏のことほんとうはそんなに好きじゃないしいつ別れるやも"という私のクソ回りくどいおいちゃんへのラブコールは、ただ単に"理路整然とした言い回しで男に対してもスバッと意見する"
という可愛いげのないただの母ちゃんみたいな印象を植え付けてしまった気しかせず今さら嘆いている。
賢くて博識で頭がよくて賢くて賢くて大人でかっこよくてとにかく博識なおいちゃんにそう言ってもらえるのはとても嬉しいのだけれど私また間違ったのかな....
可愛いげのある女の子になりたかった、でも弱い男が大嫌いでどうしようもなくなってしまう。
おいちゃんおいちゃんおいちゃん
告白をしようと、毎回顔を見るたびに決意して瞬間自信をなくしてしまう。
安い歌詞みたいで本当はあんまり言いたくないんだけどエゴだものね。でも私の愛や優しさや労り私の至上福祉全部あげたい。考えたらすぐに泣きそうなくらいそう思ってる。守ってあげたい。

今日はメンバーさんの十人十色な複雑な家庭の事情や幼い頃の陰りを少しだけ聞けてよかったです。
みんなぐちゃぐちゃで安心します。