「このせまいバスタブが世界を蹂躙する」

トリコモナスに感染してたよ!性病だよ!
いつ誰にもらったのかもわからないクソビッチの宿命だよ!

大好きな友達とグリーン牧場に行って小さな生命とその温もりに触れて畏怖してかわいいかわいいしてチョコのアイスクリームを食べてカラオケに行って喉をガラガラに枯らしてもとても気分がよくて楽しくて、だからわざわざ家にお土産を届けに行ったというのにテーブルには「トリコモナス」という字を見せつけるように結果通知が封筒からだしてあって、「は?なんで人のものを勝手に見るの?」っていう私の怒りは無視されて、まるでお前の発言は問題のすり替えだとでも言わんばかりの罵倒をあびせられた。まあ性病はどう足掻いても100%私のせいだしクソビッチは親のせいではないが、娘が毎日朝帰りするわけを、1度でもこの家庭に無視できない問題があると考えたことはないのだろうか。子供は安心ができないと必ずいつかどこかが病気になるよ。子供の世界は家がすべてなのに、自分を無償で愛してくれる存在がここに帰ればあるのだという安心感により子供は生きていけるのに、虐待される子供がそれでもお母さんお父さんと呼ぶのはそうしないと生きていけないからなのにね。22にもなって親が家庭が、と言っても甘えだと言われる世の中です。逃れることの必要性もその手段もわかっているのにそれができないのだから皆病んでいる。その根底は甘えではないよ。でもそう言われてしまう弱さは知っているから私は何も言わずにできる限り家に寄り付かない術を覚えた。誰にも教えてもらわなかったやり方で。セックスが好きだからビッチになったわけじゃないし寂しいからビッチになったわけじゃないし元彼を試すためにビッチになったわけじゃない。家にいても安心ができないからだ。親に愛された自覚がないと打ち明けてくれたおいちゃんを愛したいと思ったのだ。親が子に与える類いの愛にはなれなくても、おいちゃん自身が自分は絶対的に愛されているという安心感を常に感じることのできる大きな愛でまるごと包み込みたいと思ったのだ。そしてそれは巡りめぐって私を安心させる薬になる気がするんだ。


「私はもう終わりだ」「指輪をもらう価値は私にはないです」から始まる重苦しい車内の空気。
色々あった2ヶ月だけれど、99%童貞だったおいちゃんが私と付き合うことでいきなり性病感染って波乱万丈すぎじゃない...ああ絶対嫌われる絶対汚いって思われるもう一生触れたくない過去の過ちをこんな形で再構築するなんて嫌だ嫌だごめんなさいごめんなさい生きていてごめんなさいって喉に引っ掛かった言葉をどうしても言えずに黙り決め込んでいたら、ん?って諭すような優しい顔で私の発言を促すいつも。封筒を差し出して「...いわゆる性病にかかりました」って言ったら少しの間の後「なんだそんなことか、指輪をもらう価値がないって言うから他に好きな人でも出来たのかと思った」とか言うので「え?え?性病ですよ...?」って狼狽えていたら「だって治るんでしょ。じゃあいいじゃない。むしろ俺は君の過去の話を聞いて性病持ってないほうがおかしいと思ってたくらいだしね。火曜日一緒に病院行こう。」って私の数分前の苦悩とか申し訳なさとか自罰感情とかを一瞬で吹き飛ばしてしまった。
それでも私は申し訳なくて消えてしまいたくてそういえばいよいよ家には居づらいなって考えたら家には帰りたくなくて辛くて泣きたくて寂しくて「家に帰りたくない...」って呟いたらおいちゃんが無言でシートベルトをしめるから何事かと思って顔を見たら"ほら君も"みたいな仕草をするので???と思っていたら「今日は久しぶりに俺の家泊まりな。親いないから5:00前に帰らなくていいよ、なんなら明日の朝一緒に仕事の配達行こうか、今夜は眠らずに明日はたくさんお昼寝しよう。」って言われて大好き大好き大好き大好きちょう好き好きすきだいすきあいしてるあいしてるあいしてる!!!ってさっきまでめちゃくちゃ落ち込んでいた人間が喜びを隠す努力もしないで「えー...え~~いいんですか..?だって私トリコモナスなのに...クズなのに」なんて謙虚なふりしてニヤニヤがとまらなかった。ちなみに会話文が多いのは私が好きな人の一挙手一投足を完璧に捉えようとしてそうしていたら好きな人とのエピソード記憶だけはすかすかの脳味噌に事細かに刻み込まれてしまってそしておいちゃんの発する言葉がいつも私を強烈に捉えて離さないからです。今まで読んできたどの小説よりも確かな響きをもってこの胸をうつのです。おいちゃんが時々私を呼ぶ"きみ"という二人称を愛している。私はあなたが忘れたあなたを説明できるよ。

「なんだよーずいぶん深刻そうな顔をするからさよなら言うのかと思ったけど君そんなことで悩んでたのかバカだなあ」って頭クシャクシャに撫でてくれた。その後はおいちゃんが稲川淳二風に少し前の出来事を語ったり、"トリコモナスってなんか技の名前みたいでかっこいい"って二人で意見が合致してトリコモナスビームとかトリコモナスアタックとか言ってゲラゲラ笑っていた。「君1週間ごとに事件を持ち込んでくるからまだ付き合って2ヶ月ちょっとなのにすっごい濃いよ...面白いねえ君は」って言ったから私は嬉しくておいちゃんの頭を撫で回した。穏やかな日々なんてねえぞ元境界性人格障害のめまぐるしさを見せつけてやるー!いつだってどんな時だって楽しくするから嫌わないで。

お風呂はいつもふたりで入った。ラブホテルのでかいバスタブじゃなくて、向かい合ったら肌と肌が密着するくらい狭い狭いバスタブで私がのぼせて限界ですって言うまでずっとずっと裸で抱き合っていた。見上げたらおいちゃんの短い髪からぽたぽた水滴が落ちて顔だけ冷たかった。唇と舌は火照ったように熱くてこのままキスをしていたら溶けてしまうのではないかと思ったけれどこのまま溶けてしまってかまわなかった。わたしこのまま死んでもいいです、って言ったらまた君はそういうことを言うって笑ってくれる。吉本ばななの小説みたいですねって言ったけど吉本ばなな読んだことない。恋人と入るお風呂はなんて優しくて寂しいんだろう。どちらの体温かわからなくなって二人の境目がわからなくなって自分が誰だかわからなくなって夢と現実の違いがわからなくなって生きているのか死んでいるのかわからないのに大好きな恋人の腕にうずくまっている。ひとりぼっちで。まるで世紀末のようだ。私の恋人が世界を蹂躙している。私の世界はもうずっと前からおいちゃんのものだったんだね。どんなに喧嘩してもお風呂は二人一緒に入ろうね。


トリコモナスだけどクンニされたしフェラをしてしまう。ゴッドタンを二人で見て「手ックス」という単語を覚える。二人のおもちゃが増えたよ!!
まどろんでいたらおいちゃんがほっぺにちゅうしてくれて寝たふりしたけどバレていたかもしれない。

日曜日は午前中仕事のおいちゃんと仕事用の車の助手席に乗って配達に行った。仕事をしている恋人はいつも以上にキラキラ見えてまだ私の知らないおいちゃんがいることに感動した。車にのっている間は運転してるのに右手と左手でずっと手ックスしていた。手ックスというのは手と手をエロく絡ませてセックスの擬態をすること。
部屋に携帯を忘れてしまったためにおいちゃんが段ボールを運んでいる間暇していたら「適当にいじってなさい」とか言って自分の携帯をぽんと私に差し出す。うちの彼氏ジェントルマンすぎやしないか...なんでこんな人が高校の時に一回恋愛したくらいで収まってたの...意味わかんないちょう好き。LINE勝手に見たけどフレンド少なすぎて、というより私と共通の人やグループしかいなくて可愛い。

その後はおいちゃんの部屋でお昼寝したりクンニされたりフェラしたりコンビニ飯食べたりクンニされたりフェラしたり一日中ベットにはりついて私はおいちゃんにはりついてキスをして頬と頬をくっけておでこにちゅうをして喉仏を噛んで下唇を食んで足を舐めてアメリカのおとなが赤ちゃんのおへそにブゥッー!ってするやつをおいちゃんがして、笑って、笑って、笑っていたら夜が来て夜が明けてまた明後日ねって車の中で抱きしめあってキスをして梅雨の湿った空気を含んだ灰色の朝に舌打ちをしながら何度も何度も通っている道をこれからも何度も何度も通うことができますようにって祈りながら家路につくのだ。私を待ってはいない家。

火曜日は朝から一緒に泌尿器科のある病院に行って薬をもらった。「俺検査されるの?俺カテーテル入れられるの?怖いよぅ。」って怯えていたのほんと可愛かった。私のせいで尿道処女奪われるかもしれないのすごく申し訳ないんだけど正直死ぬほど興奮した。好きな人のオナニーなんてめちゃくちゃ見たくないですか?好きな人のあられもない姿を見たい。好きな人の汚いところを見たい。全部全部全部見せてほしい。お尻の穴、眼球の裏、脳味噌の中、奥の奥の奥のやわらかいところまで余すところなく見せて、全てに触れたい。
無事処女を守ったおいちゃん心底ホットしていた私はガッカリ。そーゆうこと言っちゃうから君は頭がおかしいって言われちゃうんだろうね。理由がトリコモナスで格好つかないけど、二人で病院なんていつか子供を宿したときの予行練習みたいでちょっとわくわくしてるんだ、なんて言ったら呆れられるかしら。子供なんて考えられないよね。


イオンのジュエリーショップでおいちゃんが指輪を買ってくれた。こういうデザインがいいと思うんだってAmazonの見せてくれたのは、だけどやっぱり実物を見ないとわからないものねって、アクセサリーショップの片隅にあるおもちゃみたいな指輪じゃなくて、ちゃんとショーケースに入ってる指輪のお店で選んでくれた。私は普段おいちゃんのことを名字にさん付けで呼んでいるのだけれど、それは店員さんにとってとても新鮮で初々しい印象を与えるらしくて可愛いですねってしきりに言われてしきりに照れた。これが10年の差。カップルじゃなくて親子だって言ってやればよかったねっておいちゃんは笑ってた。
私なんて、そんなに高いお金払ってもらう価値なんてないのに。ファミレスの入り口の小さなおもちゃ売り場で売ってるような「感情で色が変わります!」とかうたってる安い指輪でいいのに、子供の頃よく食べたスーパーに売ってる指輪型の飴でいいのに、どんなにささやかなものでも私はおいちゃんがくれたものなら簡単に華やぐことができるのに、それでも「記念日でもなんでもないけどあげたいときにあげるのがいいと思うんだよねこういうのは」って、周りに冷やかされるのもカップルの醍醐味って考え方にかわったとか言って、指輪あげるような人間じゃなかったのになあ俺とか言って、私はなんでこの人に愛されていないとか思い込んでいたんだろう。物質に縛られるなんてバカみたいペアルックなんてバカみたい約束なんて無意味なのに、とか思ってたのに今はそれがなんか安心する。私ごときの人間が私ごときの人間が私ごときの人間が私ごときの人間が、それでも人を愛したい人に愛されたいと望んで生きることをどうか許してください。
無駄に指が細くて7号のそれがなかったからお取り寄せになるらしくあと1週間私は指輪のない指を眺め続ける、はやく、はやく、生き急ぐように。私はおいちゃんが私にあげたいものがいいですって言っていたのに、柔らかい雰囲気がでますよって店員さんにまんまと誘導されてピンクゴールドの指輪を選んだ。おいちゃんはシルバーがいいよって言っていたのに最終的に選ぶのは君だってかっこよかった。恋人はシンプルなデザインが好きだってまたひとつ知ることができて嬉しい。

死ななくてよかったなあ。ごめんね、私はどんどん普通の、まともな人間になっていくよ。普通の幸せを大切にしたい人間になったよ。毎日クソなのは変わらないけど、誰にも迷惑をかけないならいつでも自分を絶ちたいと思っているけど。
神様にしてしまってごめんね。宗教にしてしまってごめん。疲れるよね、あなたを根拠に私は生きているから、あなたが正しいと思ったことが正しいですなんて簡単に言える女。これは呪いなんですなんて急に泣き出す女。それを聞いても君は面白いねって風が吹きぬけるようにふっと笑ってくれるからこんなに私は身軽に生きていけている、恋人の前でだけは。死ぬまで毎日愛してるって言おう。

素晴らしい人間になろうと思うな

めんどくせえ本当は日記を書くのすら面倒なのだけれどこうでもしないと一言も喋らず一日を終えることがあるので他の動物と私を区別するために辛うじて親指だけに神経を注ぎながらあいうえお打ってみる、もしかすると脳味噌がなくなったのではとフルフル頭を振ってみるが目眩がしただけだった。頭痛いな。いつだって。

ぼんやり明けようとする空から逃げるように目をふせて歩く自宅までの砂利道、毎日新聞屋さんのエンジン音に恋をするが時々実体に出会してしまい気まずい。am.3:00の世界でふたりぼっちだねと顔も名も知らないあなたに。「餓鬼がこんな時間にうろついてんじゃねえよ」みたいな軽蔑の眼差しで見られても雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモでしょう頑張って下さい私は雨にも風にも雪にも夏の暑さにも嵐にも社会にも自分自身にも負けっぱなしだけれどねあなたの幸せを願っていますついでに私の幸せもそして恋人と友人の幸せを神様、とひとしきり世界平和を願って玄関の扉を開ける。祈るような気持ちで。
童話って深層心理らしい。美しい物語に憧れたお姫様がいつか物語に復讐されるように、ママ、私は貴女を憎んだり恨んだりもしないわ。いつかこの腹に新しい命を宿したとき、貴女があんなに正しいと信じて疑わなかった教育に、我が子の愛し方に復讐されればいい。
家族のたてる生活音や母親の怒鳴り声が泣きたくなるほど苦手なので犯人のように足音を忍ばせて階段をあがりベッドに沈む。人や町や車が動き出す頃やっと眠りにつく。あと1歩が飛び込めない中央線。ホームで項垂れるスーツ姿の男性はあなただったのかもしれない。または私だったのかもしれないし、大好きなあの子だったのかもしれない。社会に迷惑をかけるなと誰もが君の命を侮辱しても気にするなよ。そもそも君はどんな死に方をしても迷惑だよ。どんな生き方をしても迷惑だよ。野次馬達の携帯電話が一斉にフラッシュをたいてもその頃にはもう君の眼球はこの世界を捉えてはいない。君があんなに悲しくて辛くて寂しくてやるせなくて何度も死のうと考えてそれでも生きててよかったと思う日が少しはあった、私だけは分かってあげるから。みんな幸せになればいいのにね。おやすみなさい。

相も変わらず私は昼下がりに目を覚まし、代わり映えのしない1日の始まりに愕然とする。数時間前のおいちゃんとの時間がまるで夢のようだと思う。日常の中の非日常。非日常の中の日常。あなたは後者であれ。"今日はなんだか調子がいい"の調子がいいってどんな感じ??調子がいいと感じるのは調子が悪いことがあって、それと比べていい、悪いと言っているのだから、そもそも物心ついた頃からいつもどこかしら調子が悪い私は何と比べればいいのだろうか。上半身と下半身。右半分と左半分。右脳と左脳。ならば今日は左半分が良好で下半身は絶不調。上半身はたぶんほぼ死んでる。
おいちゃんはもう数時間仕事をこなしたというのに私はダラダラとチョコレートを食べたりパトテン酸とビタミンCとあとなんかよくわからない栄養素のサプリメントをラムネ菓子のようにボリボリと噛み砕いたりしております。健康オタクと呼んでくれて構わないよ。それも早死にするタイプの健康オタク。なぜなら暴飲暴食、3食コンビニ飯、朝夜逆転生活をありとあらゆるサプリメントと科学製品でカバーしようとしている人間だから(カバー出来てない)、朝昼晩三食一汁三菜、目覚めの一杯ミネラルウォーター、ラジオ体操と柔軟体操で体をほぐし、朝バナナ朝スムージーに三時のおやつは一握りのナッツと一杯のコーヒー砂糖ミルクは控え目、通学通勤はなるべく自転車夜はランニング、半身浴で汗を流し、ヨーグルトでお腹の調子を整え、今日1日の無事を神様に感謝して22時には眠りにつく本当の健康的な生活を送っていらっしゃる方からはきっと鼻で笑われるのでしょうね。でも私は根拠のない健康法を宗教のように崇めて客観性を失い周りの人間にまで迷惑をかけるタイプの一番有害な、アムウェイ的なそれではないし、水素水に手を出したりしていないし、完全に自己完結型なので許してほしい。私は自分の好きな人達全員の死に目を見るのが目標だからめちゃくちゃ長生きしなきゃならないわけよ。おいちゃんは32歳のくせに1.5リットルのジュースを1日1本水のようにガブガブ飲んでいたからぐちゃぐちゃする以前「カップルぽく喧嘩してみよう!」ってのをふたりでしてみた時に私が「もう1.5リットルのジュースガブガブ飲むの禁止ー!」って言ってからは梨水をガブガブ飲んでる。かわいい。

車の運転は好きだ。ただし道さえわかっていればの話。空間認識能力が-100くらいなので地図が読めない。東西南北という概念がない。自分がどこにいるのかわからない。風水は方位が絡んでくる時点で信じていない。地図を読むときに自分の首を傾ける。教習所教官「...君ここ地元だよね...?」。Googleマップすら私を裏切る。「ずっとまっすぐ行けばいいんだよ」という言葉が恐怖。おいちゃんに告白する当日、自分で指定したくせに待ち合わせのいっちょうに辿り着けず「今どこにいますか?」というおいちゃんの電話に「民家」と返す。道を聞かれて快く承諾するも一緒に迷って泣く。おいちゃんとはじめてサイレンをプレーするもゾンビどうこう以前に地図が読めない、そのくせパニクると後先考えず移動して現在地を見失い、おいちゃんから「今君はどこにいるでしょう」クイズを100回出題される、間違える。「壁づたいに行けばいいって言ったでしょ!?」って100回言われる、あんなに優しくて温厚なおいちゃんの突っ込みがちょっと怒ってる。

車内は完璧なプライベート空間だ。ここだけは誰も侵すことのできない私のテリトリー。大好きな音楽を大音量でかけて大声で歌う、どんなに下手くそでもどんなに暗い音楽でも誰も咎めることは出来ない。ふふふ。でも私は常に世界に優しくいたいし自意識過剰な人間なので窓を開けてこれが俺の趣味だぜと平気な顔して、むしろ得意気な顔して自己顕示欲を垂れ流すダサい人間にはならないのだ。そういう奴等は大抵EXILEをかけているという偏見。窓はしめきる、ついでにエアコンはかけない。今の時期車内はマジ地獄。灼熱地獄。毎日ちょっと熱中症になりかけながら車を運転している。だからふらっと死にたくなるのだろうか。
汗が頭皮から吹き出て額をつたい、首筋を流れ乳房の間を這いやがて腰に到達し衣服に染み込んで行く感覚がたまらなく好きなのだ。生きてるって感じがする。あー私の体はこんなにもきちんと代謝しているんだって愛しく思う。どんなに生きたいと願ってもやがて心臓は動くのをやめるのだ。逆に、どんなに死にたいと思っても心臓が動きをやめることなどない。我々の意思とは別に我々の体は生命している。じゃあこころはどこにあるのかしら?答えなんてどこにもないでしょう、そういう歯痒さを知るべきだ。そうすれば自ずと生きること死ぬことの神秘さに気づくでしょう。死ぬなんて言わないでよ。


大学は好き。周りの人達は皆面白いし、何より私が面白いので面白い。私は絶対に面白い。
人生は暇潰しだと言う。何もしなければ地獄のように長い時間、何かしようと思えばあまりに短すぎる人生の、ちょうどモラトリアム期間と呼ばれるその只中で私が夢中になれたことなど果たしてあったのだろうか。私が何かを成し遂げてきたのならそれは自分のためというより誰かのためだったのかもしれない。車通学で本当によかった。あの頃のままいまも電車に揺られていたのならきっとまた私と私が離ればなれになって世界が灰色に溶けてプラットホームに溢れかえる人たち一人一人には私とは違う意思や人格があってそれぞれの人生、生活があるのだと考え出すとあまりの途方のなさに言い知れぬ不安や畏怖を感じて私は私という人間の所在をなくしてしまうのだろう。絵を描くのが好きだったのはみんなが褒めてくれるから、頑張って嫌いな読書感想文書いたのは先生が褒めてくれるから、いつだって外側にしかなかった動機。それでも私命を燃やしたつもりになって泣いている。胸をはれることなどひとつもないのにあの夕日に感動してる。
私はもう何をしても生き延びてしまう気がするんだ。

つまり、私のは全部ただの感傷にすぎない。
考えているつもりで実は何も考えていないことを誰かに気付かれるのが怖くて慌てて本を読んでみようと思ったり勉強してみようと思ったりするのだけれど、根本的に救いようのないほど怠惰で無精な性格のために実に非生産的な生活を送っている。
"私頭が悪いから"って予防線はってから会話始めるのやめたいなー。だって大抵のことはどうでもいいんだもの。自分の生活圏内にあるものだけで生きていけてしまっている。私にもそれなりに本を読んだり絵を描いたり見たり楽器を楽しんでみたりしたいという欲求はあるのだけれど、それをするまでに思い付きの熱がシュルシュル冷めていってしまうからいけない。何の努力もせずに教養が身についたらいいのになーーー!突然目の前に10億円が降ってきたらいいのになーーー!期待されないのは楽だなあ。ずっとこのポジションに収まっていよう。いつも優しくていい人が1度花を踏んでしまうだけで極悪非道のように言われてしまうのに、いつも悪くて酷いことばかりしている人が1度席を譲ったりするだけで天使になれるこの世界、だったらクズのままいた方が徳だよねーーー!私は本当に意地が悪いので、運転中に煽られたりすると「指と指の一番掻きづらいところを蚊に刺されろ」なんて地味な呪いじゃ満足できないから「ファイナルデスティネーションみたくお前のまわりのありとあらゆるものが凶器になってしかも結局定めから逃れられず苦しんで死ね。ブレーキの間にペットボトル転がって前方の車に突っ込んで死ね!」とか平気で考えます。
何もやりたくない何をしても楽しくないは病気だから早めに病院へ。

遠い国で怒る戦争も地下鉄で起こるテロもクソ興味のない芸能人の不倫も殺人事件も全てはおいちゃんを素敵に彩るための犠牲なんだよ。私のこのギリギリの生活ですら。
小学生の頃に朝顔の育て方を学んだ。炎天下の下体育座りで蟻を指でなぶり殺すのにも飽きて、やがて私の体が受ける日射量の許容範囲を超えて喉の奥から吐き気が込み上げてくる頃に、白い蝶がヒラヒラと目の前を通過するのを私は見たのだ。
あの蝶の羽ばたきが私とあなたを引き寄せたのでしょう。私は貴方に会うために生まれてきたのだと思います。私はそれを呪いと呼んだ。

毎日も手作りだよね

今なら部屋の窓を開け放って六月の湿った空気肺一杯に吸い込んで、ひとつの淀みもなくあたし幸せって言える気がするの。大嫌いなお母さんにも優しくできる気がするんだ。

たった数メートル、たった数十歩、恋人の部屋から駐車場までのたった数分の距離、手を繋いで歩く私の幸せ。
恋人のベッドにふたり根を張って汗と精液と体温にまみれながらお笑いdvdとバラエティ番組と映画を見ていたら夜が来て夜が明けてそしたらまた夜が来て、逆転した生活、深夜のコンビニにパジャマのまま出掛けてしまってスイーツを買おうね、手を繋いで、これが私の幸せ。
ラーメンズ東京03も言葉遊びが本当に天才的だよね、としか表現できないくらいの語彙力で頑張って感想言ってみる。テレビの中もこの部屋の外も誰かの思惑や悪意で出来てるって好きなバンドは言ってたけど、私たちの毎日は手作りだよね。誰も踏み込めない分厚いルールでふたりを囲うの!日の当たるところはおいちゃんにわけてあげるからお願い。日の当たるところでも寒くなるきっと。猫の額ほどの土地でその希望に焼かれて死んでもいいからお願い。

土曜日においちゃんの家でメンバーさんと宅飲みしたら、私懲りずに絡み酒してしまうし、そしたらおいちゃんは私の横に座って「俺もう気にしてないよ?だいぶ吹っ切れた、だから元気だして?」といきなり大公開傷口に塩だし、メンバーさんはすでに事情を知っていてかつおいちゃんから相談を受けていたという事実が判明するし、私のクソビッチと過去の過ちをこの場で舞台にあげて笑いにかえて幕を閉じてしまおう感がすごくて「やだやだやだーー!殺してくれーー!一思いにトドメを刺してくれー!さもなくば今この場で死ぬ!」と不穏な言葉を叫んでいたらおいちゃんが後ろから抱き締めてそしてほっぺにちゅーしてくれて慰めてくれた。みんなの前で。....他人の目のある中で。
冷やかしムードの一切ない和やかな雰囲気の中で私の片想いがやっと成就した。誰の目にも間違いなく映ったでしょう?私今幸せ、私この人が好き、これが私の好きになった人よ。って世界中に言い触らして歩きたい気分だった。どこに降り立っても過不足なく愛を説けるような真剣さで。

「君がいつまでも後ろめたさを感じて、俺は俺で沈んだままで一緒にいて楽しい?楽しくないでしょ、だったらどうにかするしかないんだよ」ってそう教えてくれた人は今まで一人もいなかったよ。どうにかするしかなかったけれど私ではどうにもできなかったから死のうと思ったんだあのとき、おいちゃんがそう言ってくれるならどんなに狂ってもちゃんとやれる気がするよ。

必死に抵抗したけど見られた左腕、赤いみみず腫の傷痕「馬鹿なまねするなって言っただろ、へんな気起こすなって、あのときどういう気持ちで俺が言ったのか君わかってるのかよ」って1時間おきの確認作業、「痛そうに見えるけどそんなに痛くない、というよりおいちゃんの痛みに比べれば」と笑う私の頬をつねって叱る32歳...サイコーかよ...私理不尽に怒鳴られる経験は数えきれないほどあるけど、きちんとした理論の元できちんと叱られたことそんなにないから普通にときめいちゃうんだよねごめんね...叱られるために自傷してるわけじゃないけど。自傷とか、他人から見れば痛くて悲しくて理解できないようなことを、繰り返す理由を理解してもらいたいと思わない。時間の無駄だと思う。私は見せつけるためにしているんじゃないもの。あなたが悲しくてどうしようもないときにカラオケで叫ぶのとどう違うの?ってんなわけねーだろ、自分がおかしいと自覚しろ。自分が一番可愛いことくらい認めろ。うかうかしていたら手段が目的になるからね。動脈切る前に、自分がおかしいって自惚れじゃない心のちゃんとしたところで気づきましょうね。

慣れてくるともはや自傷は作業と一緒だから本人からすると、少なくとも私は、痛くも痒くもない。けれど、自分を思ってくれる人がそんな不健康なやり方でしか自分を維持してられないっていうならそれがこの世で一番の不条理だと思うし、あなたの痛みはあなたの痛みでしかないって教えてあげたい。
こんなに頭と体、わたしとわたしが簡単にバラバラになるような時代だもの、痛みで繋ぎ止めるのは正常な感覚と言えないでもないけれどそれも虚しくなるだけよ。
私はこうして文章を書くことでどうにか繋ぎ止めているけれどそれがどれほど力を持っているのかはわからない。だからせめて好きな人くらいには私っていう人格や肉体を刻み付けたい、背負ってほしい。私も背負うから。あなたが信じる私を信じるから。


貴方の好みならなんでも分かっているのよの配色の下着。少し高めの黄金色のはちみつ。新しい石鹸の袋を破いたときのほのかな香り。もう昔の気持ちは忘れちゃったなあ。死について考えない自分に焦燥を感じて慌てておいちゃんの死体を見る。
星はただ綺麗としか言えなくなった。

本当は言いたいことなんてあんまりないんだよね。
もしくはきっとずっと同じことが言いたいんだと思う。

あの部屋のエアコンディションは最高で、テレビとパソコンの明かりだけがチカチカ眩しくて、おいちゃんの真っ黒の目が私を見つめるときいつも言葉が出ないのは、話しているそばから私の大切な気持ちが消えてしまう気がするからです。言葉に出来ないものは言葉にしてはいけない。瞳の奥の沈黙の中のほんとうの気持ちを知りたくて重たい沈黙に耳をそばだてる。涙がでそうな幸せのときと悲しくて仕方がないときの胸の痛みはなぜこれほどまでに似ているのかしら。

おいちゃんの足を舐めた。服従されたかったのにあんな顔ずるい。

恋の話ばっかりしてると馬鹿っぽいから趣味がほしい...。
趣味がおいちゃんなんだよね...。

代わりに僕が罰してあげましょ なんて言うかよバカ

いっそ今まで使ったこともないような汚い言葉で罵ってくれたら、なんの躊躇もなく前方の車に突っ込んで清々しいほど豪快に醜く肉片を撒き散らすことができたのに、こんな風になっても抱き締めてくれてキスをくれて「大丈夫?帰れる?へんな気起こすなよ」なんて言ってくれるんだから、私いよいよ死んでしまいたい。

彼が傷つくなんて思ってなかった。
恋人になったって、大好きなのはいつも私だけだと思っていた。土曜日に飲めないくせに甘ったるい酒を鼻をつまみながらガブガブ飲んでゲラゲラ笑ったり怒ったり先輩に絡み倒して手当たり次第色んな人に電話して脳味噌ちょうサイケとか思ってたらおいちゃんがむかえにきてくれて、顔見た瞬間「私のこと好きじゃないくせに優しくすんなよ!」とか32歳にめちゃくちゃため口きいてギャン泣きしながら暴れたら、「なんでこんなに酔ってるのよ笑」なんて言いながら抱き締めてくれて、私の支離滅裂な話を聞いてくれて、「君が2年後まだ俺のこと好きなら同棲しよっか」って言ってくれた、あの時の声のトーンもいつも鼓膜にこびりつくその呂律も後ろ髪をくすぐる鼻先も抱き締める腕も怖いくらい覚えてるのに、それで私舞い上がってしまってふたりの未来について、未来の生活について、夢物語なんかじゃないそう遠くもない未来の希望についてなんの疑いもなく語り合っていたのに。
私あんなに優しい人を傷つけた。

過去の恋愛について全部教えてくれないかと言われ、まあ私がクソビッチなのは付き合う以前から周囲にはバレていたし、私には気にするまでもない過去のちょっとした過ちという認識しかないから笑い話のように話していたのだけれど、不倫さんのことだけは現在進行形の間違いとして、「でも会ってないしちょっとしたメル友ですよ」くらいの気持ちで暴露したつもりが、「会うとか会わないとかそういう問題じゃないんだよね」というおいちゃんの一言を皮切りに、「あっあっあっ」って脳味噌チカチカしてる間に、どうしようもないところまでいってしまった。

不倫さんのことは究極まで濁したし、そもそも会っていないなんて嘘だし、だから心底自分は卑怯だなって思いもしたけど、そこまで話す必要もないと思っていたから。だって私が好きなのはおいちゃんだけだもの。

でもそれが甘かったんだね。
おいちゃんが傷つくなんて思ってなかったんだよ。
だって私のことで彼が傷つくなんてどうして思えたの。誰か教えてよ。

「俺に告白した時点で言ってくれれば傷はつかなかったよ。俺と付き合ってから君が浮気するのだってそれは俺の責任だから許せる。」

以降何の言葉も発しなくなったおいちゃんが知らない人みたいで怖かった。

わかったよ、これなんだね。
なにか辛いことがあったときダウナー系だから沈むしかないよって笑ってた意味を、死んでやろうって餓死を選んだ理由も、あのとき全部合致した。
なにか言いたげに金魚みたいに唇を微かに動かすけれどそれが音にならなくて、奥二重のおっきな目をうつろに細めて、ひたすらじっとベッドに背中を張り付けて、耳に痛い沈黙をまもって、死体にでもなろうとしてたの?
私人形みたいになったおいちゃんの上でボロボロ泣きながら「ごめんなさい、許して、何でもするから何でも言うこと聞くから、何か言ってよねえ、今何を思っているのか教えて」ってそればっかり三時間馬鹿な女みたいにすがりついておいちゃんはビー玉みたいな目で私を見つめ続けてあの地獄のような長い長い静寂、怖かった。

清算してくれ...ってうなり声みたいに発声したから私おいちゃんの目の前で不倫さんのメアド消去して、一方的さよなら告げたの。
でもそうしたところで、おいちゃんの中で"自分と付き合っていながら他の男とメールしていた"っていう事実が消えるわけでもないから、私が何を言ったところで言い訳にしかならない。

私がおいちゃんにしてきたこと全部、言ったこと全部嘘じゃないよ。全部本心なんです。大好きなんです。って訴えても、こういうとき言葉は本当に無力だね。

今の私が何を言っても私の言葉はおいちゃんを傷つける道具にしかならない、それが本当に辛い。
傷つけばいいと思ってた、あんたのその痛みが私を証明する唯一よ、あんたのそのドーナツの穴みたいな虚しさが私があんたと生きてる唯一の証拠なのよってやり方で生きてきた。
間違ってたかなあ。おいちゃんを傷つけて、傷ついてるおいちゃんを今目の当たりにしていて、あれから数日泣き続けて、家でも学校でも水分なくなって干からびるんじゃないかってくらい泣き続けて、数年ぶりに腕を切って、切ったところでこれはおいちゃんの痛みじゃないのよ。苦しくて吐き出したいでも吐き出せない泥水のような罪悪感をそれでも吐き出すためのものとしての自傷行為。もう切るスペースないから傷を重ねて、ぷつぷつはしっこにたまる赤い水玉、あの頃みたいにはいきませんね、勢いが足りない、まあ血をみたいわけじゃないからね、痛くなれば満足だけど本当に痛いのはあれから毎日やむことなく痛む心臓や胃などの臓器で、もっと言えば痛いのはおいちゃんで、何を被害しゃぶって「痛みがわかるよ」だなんて、馬鹿みたい。
私馬鹿みたい、おいちゃんからしたら私がおいちゃんにあげた大好きって言葉も愛撫も愛液も嫉妬も馬鹿みたいでしょう。嘘つき。
まあ悲しいよね、信用されないのは。仕方ないよね、自業自得。


「ポジティブに捉えるならこれだけ傷つくくらいには君のこと好きだってことだよ」って言われて、「ああやっと...!私の夢叶った!」って手放しで喜ぶことができないくらいにはまともな頭。
ごめんなさいでもちょっぴり嬉しいですおいちゃんのほんの少しにでも爪痕残せたのならそれが私の全てです。

あー

優しいから、すぐには立ち直れないしお出掛けもする気力ないけど会いたかったら会いに来てと言ってくれるから私はこんなぐちゃぐちゃになりながらも毎日会いにいって、毎日おいちゃんと抱きあいながら数時間泣き続けて「そろそろ泣き止んでよ」って言わせちゃう被害者はあなたなのよってまた泣く。

少なくとも1ヶ月は人間らしい生活をできる気は全くしませんね。おいちゃん私が死ぬんじゃないかって本気で思ってるから、自分の心配しろって感じだけどあの人、まあ死なないように頑張ります。
私の言葉嘘じゃないってどれだけ時間かかっても信用されるように。今まで赦しを乞うふりをしてどうでもいい顔してた罪とか間違い全部まわってきたのね、つけが。でもこれでやっと不倫さんとも関係終わらせることができたし私やっとアバズレ卒業できる。
おいちゃんのために生きていくのよ。

君が先に生まれたことをついさっきまで忘れていた

恋とか愛とかおいちゃんとかそればっかり毎日毎日飽きもせずにつぶやいてまるで恋愛パラノイアそんな私は誰の目にも滑稽に映るだろうか、熱病に浮かれて酩酊する頭すっからかんの若者のひとり、でも私はどうしようもない下戸なのです。


お酒入ってるチョコレートとかオレンジピールがアクセントのチョコレートケーキとか意味わかんない。兎の皮かぶった狼かと思うよあんなに暴力的な糖分があっていいわけない。甘いはそれだけで暴力じゃないといけない。砂糖付けの海とかアメリカのちーぷなショッキングピンク着色料ドバドバのバターケーキとか私がいつも抱えている大好きな人への「ねえ血混ぜていい?!体液とか入れていい?!いいよね!一生に一度しかない死因あなたの胃液に溶かされてミートパイになりたいの!」とか。

そんな原色抱えて生きているのに、ゆっくり溶かされていくみたいな会話。
これが幸せかと勘違いしてしまう私の容易い脳が吐き出す言葉が淡いピンクや透けるようなオレンジ、水色や黄緑したゼラチン気質の膜に覆われて、おいちゃんの部屋をぷかぷか漂っている。おいちゃんが息を吐く度にぱちぱちと弾けておいちゃんが一層きらきらと輝く様は。少女漫画にでもなれるんじゃないかしらこの人。

「餓死しかけていた頃のおいちゃんに会いたい」「ただじっとしてるだけだからつまんないよ」「いいんですじわじわ衰弱していくおいちゃんが見たい」「君そんな顔してどえすなの?」「ちゃかさないでください!」
「そういえばモンブラン買ってきてたんでした」「モンブラン好きとは言ったけど君、もう23時だよいけない子だねえ、おっさんにはキツいなあ」「じゃあかわりにちんこ見せてください」「かわり」「ちんこにモンブランこすりつけたい」「ねえ」「おしっこしてるとこ見せて...」「よくない」「....食えねえな」「あれ?本性出た?」
みたいな
ちぐはぐな、ふわふわの会話を繰り返しては時々眠ってまた起きてdvdを見て、起き抜け 鳥の巣みたいな頭した私の髪を撫でてくれる。
こんな普通の幸せを幸せとして認識できる私はもう大丈夫。
不倫さんが心療内科に行ったって、眠れないんだって、私に依存されたいって顔を歪ませても私はもう引きずられないし同情もしないしメンヘラじゃないし人との距離の取り方がわかる。
綺麗事は言わないけど、同情なんかされたくねえって本物の強がりさんじゃない限りかわいそうって言ってほしいのが人間だとするなら、一晩中あなたかわいそうねって慰めてあげる。
ラブホテルでセックスもしないで一晩中傍にいてあげられる。私が好きなのはおいちゃん一人だけだけど、私の良心を注いであげられる人は沢山いる。
案外それで救われたりするものよ。

お前こそ向精神薬眠剤飲みすぎてドラム叩く手震えてるのに偉そうに説教できるわけ?手首の傷隠したら?そんなためらい傷で私に近づけると思った?救えるとでも思った?思い上がりもほどほどにしろよ、愛は全能でも万能でもねーぞ
ってトイレで喧嘩してトイレの壁に血しぶきぶちまけたあの頃の私が生温い風にさらわれる。
夏もすぐそこ。

あの子の寝顔観察

幸せな奴のブログとか幸せになった奴のブログなんて読んでいて面白くない。そんなディズニーランドみたいな世界じゃなくて、私は不幸ごっこに酔いしれるオナニーブログが読みたい。
でも私はまんまと幸せになってしまったので、正しくマスターベーションを垂れ流します。

大勢の中の一人だった私がおいちゃんの隣を独り占めして笑ったりしている...好きなものを汚したくないから見ているだけでそれで充分だからって熱視線で焼いた筋張った腕や肩に触れている。男のくせにやたらと血色のいい唇や頬に近づいて首を噛んで粘膜を擦りあって指をからめあって菌を交換している。奇跡だ、彼が生きる全てが奇跡で毎日がとても穏やかに流れていく。
あんなにセックスばっかりしてきたのにほんとうに好きな人のひとつひとつがこれほどまでに緊張するなんてまるで中学生みたい。丁寧に丁寧にお互いを探っている。
私は破滅型だから。ずっと一緒に死んでくれる人を探していた。私を忘れてほしくなかった。永遠になるためには死ぬしかないと思っていた。お願いだからわたしだけを見てよって腕を切りつけて血を流したところで縛り付けることのできるものなんて何もないって気づいていたけど、同情的な男たちがたくさん慰めてくれたから便利だった。

中二病なんだろうけどやっぱり壊すのが好きだ。
そいつが今まで築きあげてきた信念や常識をぶっ壊して私で再生させることに夢中だ。私がいないと生きていけない人間を見下しながら傍に置いてほしがった。私は頭が悪いし世の中のことは何もわからないし歴史も苦手なので、時代どうこうと語れないのがとても残念だ。子供の頃から真面目に勉強したり本を読んでおけばよかったなあ。それでも私が生まれたときから愛はコンビニで買えたし、巷に溢れかえるラブソングがワゴンセール同等の価値でこの私とやらを侵食していたのは言うまでもなかった。愛の重さは暴力に他ならなかった。それは物理的なものでもあったし精神的なものでもあったけれど、血が流れなければ全てはお遊びのように退屈で温いものだと盲目的に嫌悪していた。痣ができるとほっとした。精液が太股を伝う感覚にうっとりしていた。私こそが正義だ、不健全なのはこんな世界で愛だ恋だをへらへらと語りながら週末はディズニーランドに行きたいねなんて笑っているお前らの方だ。

こんな過去が今の私を形成しているのは悔しいけれど事実です。


過去の過ちも、私がどういう人間なのかも洗いざらい話した。おいちゃんは座布団を枕にして寝転びながら、お伽噺を聞いているかのようなやわらかさと少しの好奇心で私の話を聞いていた。
「私は後ろ指をさされるのは慣れていますがおいちゃんに迷惑かけたくないんです、引いたでしょう?」と言ったら「でも今は違うんでしょう、なら問題ないよね」と。そう言って私のケロイドでぼこぼこの左腕を撫でた。そうだ私はこの人のそういうところが好きだった。下手に俺が守ってあげるからなんてことも言わないし、突き放すこともしない、そういう軽く笑い飛ばしてしまう明るさが好きだった。私もおいちゃんもダウナー系だからふたりでズルズル落ちてしまうんじゃないかって私たちの共通認識として心配していたけれど、なんだか何が起きても乗り越えられる気がしてしまいました。
してほしいことしてほしくないことしたいことしたくないこと全部話しましょうって言ったくせに二人とも唸るだけで見つからず、私はおいちゃんがしたいことをしてほしいし私はそれを叶えてあげたいからこうしているので。なにか案を捻り出したと思ったら「してほしいことなら、肺炎だとかの可能性あるからはやく病院に行きなさい。」と注意されて萌え殺された。私は数年前から風邪をひくと数ヵ月咳だけがとまらなくなってしまった。相変わらず不正出血は続いている。

思い返せば、たった1ヶ月の間に行ったお花畑も大洗の水族館も小さい動物園も変な美術館もずっと笑っていた記憶しかない。可愛くみられたいから綺麗に笑いたいのにおいちゃんも私も楽しい人間だから大口あけてゲラゲラ笑い転げてしまう。私たちは絶対絶対おもしろい人間だからどんな場所でもエンターテイナーみたいに過ごしていられる。


お出掛けもすごくすごく幸せだけれど、昨日のお泊まりが一番幸せだった。一緒にアイスを食べるだけで涙がでるほど嬉しかった。あーーもっと、映画やドラマに興味を持っておくんだったなあ....おいちゃんの頭の回転のはやさや言い回しのうまさは、生まれつきも絶対あるのだろうけど、きっとこれらがおいちゃんを形成しているのねと思ったら嬉しくて楽しくて私ももっと海外ドラマとか映画見てみようという気になった。好きな人が好きなものを好きになりたい。興味のあるものだけね。抱き締められながら見たフルハウス素敵だった。
ずっとずっと抱きしめあいながら眠った。私は寝るのが勿体なくておいちゃんの寝顔を観察して過ごした。時々おいちゃんは目を覚まして、目を覚ますたびにキスしてくれた。
誰かと抱きしめあって寝るとき、説明のつかない寂しさが常にあった。オレンジに溶ける部屋でダウナー音楽に沈みながら最高の孤独に混ざりあうこともできない、大勢のなかでひとりぼっちの一番苦しいやつに近いそれ。横になって泣くと生暖かい涙が小鼻をつたって首まで流れるのが気持ち悪くて嫌いだった。背中合わせの誰かが寝返りをうつたびに、私は大切なものをひとつひとつなくしてしまう。

おいちゃんと眠ったとき、1度も寂しいと思わなかった自分がすごく自然に生きているみたいで安心した。安寧はここにあったよ。これから何度も悲しくなるのだろうけど、それはもう変わらないのだろうけど、できるだけ長く生きたいなあと思う。

おいちゃんが仕事に出掛けるまでの1時間、後ろからくるまれながらフレンズを見た。私朝が苦手で、おいちゃんの寝巻きを顔に巻き付けて(匂いを嗅ぎたい)ベッドの上で体育座りしながらぼけーっとしてたら「そこのねぼすけ服を返しなさい」と言われてやっぱり萌え殺された。ねぼすけって....!ねぼすけって...!こんなに可愛い響きしてたっけ!?ああそうかおいちゃんが可愛いんだ!!ぎゃー!!とかしてた。

昨日一晩で、私の噛みぐせがばれたり好きな人の服を持って帰ろうとしたり眼球舐めてみようとしたりだいぶいろいろ露呈したけどぜんぶぜんぶ真剣に笑ったり実践してみようとするおいちゃんが愛しい。

魔法は効かない 呪いは解けない

うわー!死にてー!全て自分で仕組んだことなのに誰かに責任をとってもらいたがっている。


彼氏と別れた。
正確に言うと、1度距離を置いてその期間中にお互いのことをきちんと考えるという冷却期間を置くということだ。
さらに正確に言うと、私が彼氏と今後付き合っていけるかどうかを私ひとりが考えて最終的に結論を出すための猶予期間である。

初期衝動でずっと生きていけないのなら私たちきっと友達でいるほうがうまくやれる。
本当は、DVとか私が彼氏に言った酷いこととか、そういうのは別にどうでもよくて、私がもう同情心だけで彼氏と一緒にいることに耐えられなくなった。この提案を持ち出したとき、それはもうお互いダムが決壊したようにワンワン泣いた。私はこれから彼氏が いなくなるという寂しさというより、とんでもない決断をついに自分自身がしてしまったという後戻りの出来ない不安や恐ろしさによってワーワー泣いた。今まで散々別れたほうがいいとまわりに言われながらも、そして何度も浮気しながらも結局別れることなくここまできてしまったのはひとえに私に決断力がなかったせいだ。今までの、人生に対する決断力のなさが恋愛まで持ち越されてしまった。考えているようで何も考えていないよね君はと、見抜ける人なら見抜けてしまう私の臆病。

最後は泣きながらキレてキレすぎて冷静になった。そんな私の隣で彼氏はほぼ過呼吸ぎみであれこいつ死ぬのかな?私がいないとやっぱり死ぬのかな?と、やっと彼氏にぶつけることができた愛や恋だの綺麗な言葉では誤魔化せない同情心がむくむくと膨らんできて「あっうんまあでも別に別れるって決まった訳じゃないしそんなに落ち込まないでよ人がこんなにも悩んで決断したんだからあなたが泣くのはずるいよとりあえず私の誕生日までは恋人でいるしあなたの誕生日までには結論だすし...何も絶交するわけじゃないんだからメールだってLINEだってしていいよ?ただ夜会えなくなるだけで、、あなたの誕生日って10日後ぐらいなんだから私が自分探しのプチ旅行にでると思ってさあ10日だけ我慢してよ。」っておい!予防線はりすぎ!!別れる気ないだろ!!

泣きじゃくられながら「ずっと待ってるから、俺が好きな気持ちは一生変わらないから」と言われた。



別れ話の前に彼氏と夜桜を見たのだ。
淡い雪のような花びらがライトアップされて鮮やかなピンクに染まっていて幻想の世界のようにきれいだった。屋台の食べ物は全部はんぶんこした。わたし春に生まれて幸せよ!!って笑っていたのに私はおいちゃんや不倫の彼のことを考えた。ふと隣に誰がいたらいいだろうと考えて誰もいなくなった。私の隣にいるのはいつも寂しさや悲しさだ。

昔のように死ぬことについては不思議と考えなかった。桜を見ては泣いていた。花が咲けば泣き、花が散れば泣いた。私は全うに思春期の感傷に振り回されていた。思考はどんどんシンプルになっていく、どんどん色んなことを忘れていく。好きな人たちを好きな気持ちもいつか忘れていくだろうか。

そろそろ疲れた。

だから私は彼氏と1度離れて、おいちゃんに告白をして全部終わらせなきゃいけないんだ。
私に呪いをかけたのは世間でも彼氏でも好きな人達でも過去の思い出でもなく、私だったんだね。

だから私は彼氏ともう1度付き合う前に、おいちゃんに告白をする。本当はおいちゃんの5月の誕生日に告白するつもりだったからこれは誤算だが。

なんで水曜日学校あるんですか...行かなくていいかな学校....健康診断とか....今さら悪いところだらけだし....おかしいところたくさん、とくに頭がね....絶対夜眠れないし朝から動悸で死ぬと思うんだよね。告白したことないし!告白するときってどんな服着ればいいの?!

約束メールを保存して嬉しくて切なくて少しだけ泣いた。



彼氏にまつわる相談というのは二人きりで会うための口実。そして本当に私が終わることへのカウントダウンで彼氏のことをもう1度好きになる希望です。希望と言い張らなければ。
だってもう仕方ないよ、待ってるって言われたら私のような人間を待ってくれるのはこいつだけしかいないって思うじゃない。だってもうわかんないんだよ、どうやったら彼氏が私を嫌いになるのか。散々奈落の底に突き落としてきたのに。


私って案外普通の人間だから、悲しい別れが嫌いなんだ。
全部なくす気なんてさらさらない。