君が先に生まれたことをついさっきまで忘れていた

恋とか愛とかおいちゃんとかそればっかり毎日毎日飽きもせずにつぶやいてまるで恋愛パラノイアそんな私は誰の目にも滑稽に映るだろうか、熱病に浮かれて酩酊する頭すっからかんの若者のひとり、でも私はどうしようもない下戸なのです。


お酒入ってるチョコレートとかオレンジピールがアクセントのチョコレートケーキとか意味わかんない。兎の皮かぶった狼かと思うよあんなに暴力的な糖分があっていいわけない。甘いはそれだけで暴力じゃないといけない。砂糖付けの海とかアメリカのちーぷなショッキングピンク着色料ドバドバのバターケーキとか私がいつも抱えている大好きな人への「ねえ血混ぜていい?!体液とか入れていい?!いいよね!一生に一度しかない死因あなたの胃液に溶かされてミートパイになりたいの!」とか。

そんな原色抱えて生きているのに、ゆっくり溶かされていくみたいな会話。
これが幸せかと勘違いしてしまう私の容易い脳が吐き出す言葉が淡いピンクや透けるようなオレンジ、水色や黄緑したゼラチン気質の膜に覆われて、おいちゃんの部屋をぷかぷか漂っている。おいちゃんが息を吐く度にぱちぱちと弾けておいちゃんが一層きらきらと輝く様は。少女漫画にでもなれるんじゃないかしらこの人。

「餓死しかけていた頃のおいちゃんに会いたい」「ただじっとしてるだけだからつまんないよ」「いいんですじわじわ衰弱していくおいちゃんが見たい」「君そんな顔してどえすなの?」「ちゃかさないでください!」
「そういえばモンブラン買ってきてたんでした」「モンブラン好きとは言ったけど君、もう23時だよいけない子だねえ、おっさんにはキツいなあ」「じゃあかわりにちんこ見せてください」「かわり」「ちんこにモンブランこすりつけたい」「ねえ」「おしっこしてるとこ見せて...」「よくない」「....食えねえな」「あれ?本性出た?」
みたいな
ちぐはぐな、ふわふわの会話を繰り返しては時々眠ってまた起きてdvdを見て、起き抜け 鳥の巣みたいな頭した私の髪を撫でてくれる。
こんな普通の幸せを幸せとして認識できる私はもう大丈夫。
不倫さんが心療内科に行ったって、眠れないんだって、私に依存されたいって顔を歪ませても私はもう引きずられないし同情もしないしメンヘラじゃないし人との距離の取り方がわかる。
綺麗事は言わないけど、同情なんかされたくねえって本物の強がりさんじゃない限りかわいそうって言ってほしいのが人間だとするなら、一晩中あなたかわいそうねって慰めてあげる。
ラブホテルでセックスもしないで一晩中傍にいてあげられる。私が好きなのはおいちゃん一人だけだけど、私の良心を注いであげられる人は沢山いる。
案外それで救われたりするものよ。

お前こそ向精神薬眠剤飲みすぎてドラム叩く手震えてるのに偉そうに説教できるわけ?手首の傷隠したら?そんなためらい傷で私に近づけると思った?救えるとでも思った?思い上がりもほどほどにしろよ、愛は全能でも万能でもねーぞ
ってトイレで喧嘩してトイレの壁に血しぶきぶちまけたあの頃の私が生温い風にさらわれる。
夏もすぐそこ。