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代わりに僕が罰してあげましょ なんて言うかよバカ

いっそ今まで使ったこともないような汚い言葉で罵ってくれたら、なんの躊躇もなく前方の車に突っ込んで清々しいほど豪快に醜く肉片を撒き散らすことができたのに、こんな風になっても抱き締めてくれてキスをくれて「大丈夫?帰れる?へんな気起こすなよ」なんて言ってくれるんだから、私いよいよ死んでしまいたい。

彼が傷つくなんて思ってなかった。
恋人になったって、大好きなのはいつも私だけだと思っていた。土曜日に飲めないくせに甘ったるい酒を鼻をつまみながらガブガブ飲んでゲラゲラ笑ったり怒ったり先輩に絡み倒して手当たり次第色んな人に電話して脳味噌ちょうサイケとか思ってたらおいちゃんがむかえにきてくれて、顔見た瞬間「私のこと好きじゃないくせに優しくすんなよ!」とか32歳にめちゃくちゃため口きいてギャン泣きしながら暴れたら、「なんでこんなに酔ってるのよ笑」なんて言いながら抱き締めてくれて、私の支離滅裂な話を聞いてくれて、「君が2年後まだ俺のこと好きなら同棲しよっか」って言ってくれた、あの時の声のトーンもいつも鼓膜にこびりつくその呂律も後ろ髪をくすぐる鼻先も抱き締める腕も怖いくらい覚えてるのに、それで私舞い上がってしまってふたりの未来について、未来の生活について、夢物語なんかじゃないそう遠くもない未来の希望についてなんの疑いもなく語り合っていたのに。
私あんなに優しい人を傷つけた。

過去の恋愛について全部教えてくれないかと言われ、まあ私がクソビッチなのは付き合う以前から周囲にはバレていたし、私には気にするまでもない過去のちょっとした過ちという認識しかないから笑い話のように話していたのだけれど、不倫さんのことだけは現在進行形の間違いとして、「でも会ってないしちょっとしたメル友ですよ」くらいの気持ちで暴露したつもりが、「会うとか会わないとかそういう問題じゃないんだよね」というおいちゃんの一言を皮切りに、「あっあっあっ」って脳味噌チカチカしてる間に、どうしようもないところまでいってしまった。

不倫さんのことは究極まで濁したし、そもそも会っていないなんて嘘だし、だから心底自分は卑怯だなって思いもしたけど、そこまで話す必要もないと思っていたから。だって私が好きなのはおいちゃんだけだもの。

でもそれが甘かったんだね。
おいちゃんが傷つくなんて思ってなかったんだよ。
だって私のことで彼が傷つくなんてどうして思えたの。誰か教えてよ。

「俺に告白した時点で言ってくれれば傷はつかなかったよ。俺と付き合ってから君が浮気するのだってそれは俺の責任だから許せる。」

以降何の言葉も発しなくなったおいちゃんが知らない人みたいで怖かった。

わかったよ、これなんだね。
なにか辛いことがあったときダウナー系だから沈むしかないよって笑ってた意味を、死んでやろうって餓死を選んだ理由も、あのとき全部合致した。
なにか言いたげに金魚みたいに唇を微かに動かすけれどそれが音にならなくて、奥二重のおっきな目をうつろに細めて、ひたすらじっとベッドに背中を張り付けて、耳に痛い沈黙をまもって、死体にでもなろうとしてたの?
私人形みたいになったおいちゃんの上でボロボロ泣きながら「ごめんなさい、許して、何でもするから何でも言うこと聞くから、何か言ってよねえ、今何を思っているのか教えて」ってそればっかり三時間馬鹿な女みたいにすがりついておいちゃんはビー玉みたいな目で私を見つめ続けてあの地獄のような長い長い静寂、怖かった。

清算してくれ...ってうなり声みたいに発声したから私おいちゃんの目の前で不倫さんのメアド消去して、一方的さよなら告げたの。
でもそうしたところで、おいちゃんの中で"自分と付き合っていながら他の男とメールしていた"っていう事実が消えるわけでもないから、私が何を言ったところで言い訳にしかならない。

私がおいちゃんにしてきたこと全部、言ったこと全部嘘じゃないよ。全部本心なんです。大好きなんです。って訴えても、こういうとき言葉は本当に無力だね。

今の私が何を言っても私の言葉はおいちゃんを傷つける道具にしかならない、それが本当に辛い。
傷つけばいいと思ってた、あんたのその痛みが私を証明する唯一よ、あんたのそのドーナツの穴みたいな虚しさが私があんたと生きてる唯一の証拠なのよってやり方で生きてきた。
間違ってたかなあ。おいちゃんを傷つけて、傷ついてるおいちゃんを今目の当たりにしていて、あれから数日泣き続けて、家でも学校でも水分なくなって干からびるんじゃないかってくらい泣き続けて、数年ぶりに腕を切って、切ったところでこれはおいちゃんの痛みじゃないのよ。苦しくて吐き出したいでも吐き出せない泥水のような罪悪感をそれでも吐き出すためのものとしての自傷行為。もう切るスペースないから傷を重ねて、ぷつぷつはしっこにたまる赤い水玉、あの頃みたいにはいきませんね、勢いが足りない、まあ血をみたいわけじゃないからね、痛くなれば満足だけど本当に痛いのはあれから毎日やむことなく痛む心臓や胃などの臓器で、もっと言えば痛いのはおいちゃんで、何を被害しゃぶって「痛みがわかるよ」だなんて、馬鹿みたい。
私馬鹿みたい、おいちゃんからしたら私がおいちゃんにあげた大好きって言葉も愛撫も愛液も嫉妬も馬鹿みたいでしょう。嘘つき。
まあ悲しいよね、信用されないのは。仕方ないよね、自業自得。


「ポジティブに捉えるならこれだけ傷つくくらいには君のこと好きだってことだよ」って言われて、「ああやっと...!私の夢叶った!」って手放しで喜ぶことができないくらいにはまともな頭。
ごめんなさいでもちょっぴり嬉しいですおいちゃんのほんの少しにでも爪痕残せたのならそれが私の全てです。

あー

優しいから、すぐには立ち直れないしお出掛けもする気力ないけど会いたかったら会いに来てと言ってくれるから私はこんなぐちゃぐちゃになりながらも毎日会いにいって、毎日おいちゃんと抱きあいながら数時間泣き続けて「そろそろ泣き止んでよ」って言わせちゃう被害者はあなたなのよってまた泣く。

少なくとも1ヶ月は人間らしい生活をできる気は全くしませんね。おいちゃん私が死ぬんじゃないかって本気で思ってるから、自分の心配しろって感じだけどあの人、まあ死なないように頑張ります。
私の言葉嘘じゃないってどれだけ時間かかっても信用されるように。今まで赦しを乞うふりをしてどうでもいい顔してた罪とか間違い全部まわってきたのね、つけが。でもこれでやっと不倫さんとも関係終わらせることができたし私やっとアバズレ卒業できる。
おいちゃんのために生きていくのよ。